年収相場2026-07-08監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

金融PM年収相場を職域別に見る — 「運用保守」から「プロジェクト推進」に軸足を移すと何が変わるか

この記事の要点

「今の年収から、どのくらい上がる可能性がありますか」。転職相談で最も多く聞かれる質問の一つです。率直に言うと、この質問に一律の答えはありません。同じ「勘定系10年」というキャリアでも、運用保守にとどまっているか、刷新プロジェクトの推進役に回っているかで、市場からの評価は大きく変わるからです。

0. 前提 — 年収は「経験年数」ではなく「統括範囲」で決まる

誤解がないように申し上げると、金融PMの年収を決めるのは経験年数そのものではありません。どれだけの予算規模・関係者数・意思決定権限を持ってプロジェクトを動かしてきたか、という「統括範囲」がより大きく影響します。同じ勤続年数でも、担当してきた案件の規模と役割によって評価は大きく変わります。

以下の数字は、あくまで当メディア独自ガイドの目安値であり、統計に基づくものではない点をあらかじめお断りしておきます。

1. 勘定系刷新PM — 600〜950万円が目安

プロジェクト規模と、移行フェーズでの意思決定権限の大きさで変動します。大型リプレースの移行管理責任者クラスになると、上限に近い水準での提示が見られます。逆に運用保守のままの求人では、この水準に届きにくい傾向があります。

2. BaaS・組込金融推進PM — 650〜1000万円が目安

母数がまだ少なく、企業ごとの提示額のばらつきが大きい職域です。新規事業をゼロから立ち上げた経験がある方は上限に近い水準、プロジェクトメンバーとしての参画経験が中心の方はレンジの下限寄りになる傾向が見られます。

3. リスク・コンプライアンスPM — 600〜900万円が目安

金融庁対応や監査対応の実務経験の有無で評価が大きく分かれます。規制対応プロジェクトを主導した経験がある方は、景気に左右されにくい安定した需要を背景に、比較的高い水準での提示を受けやすい傾向にあります。

4. データ・API連携PM — 600〜920万円が目安

実務でAPI設計・データ基盤構築を担った経験の有無で評価が大きく分かれます。技術的な深さと事業側への説明能力を両方持つ人材は、レンジの上限に近い評価を受けやすい傾向があります。

5. PMO・大規模プログラム統括 — 700〜1050万円が目安

統括するプログラムの規模と、経営層への直接報告の有無で大きく変動します。複数プロジェクトを横断して管理してきた経験は、この職域では特に高く評価される傾向にあります。

5-1. 職域を横断してキャリアを積むという選択肢

ここまで職域ごとに年収レンジを見てきましたが、実際のキャリアは一つの職域にとどまらないことも多いです。たとえば勘定系刷新PMとして経験を積んだ後、その経験を土台にPMO統括のポジションへ移る、あるいはリスク・コンプライアンスの知見を活かしてBaaS推進に転じる、といった横断的な移動は珍しくありません。

僕が面談の中で見てきた限り、こうした横断的なキャリアを歩んでいる方ほど、年収レンジの上限に近い評価を受けやすい傾向があります。理由は単純で、複数の職域を経験していること自体が、プロジェクト全体を俯瞰する視座につながるからです。一つの職域を極めることと、複数の職域を横断することは、どちらも有効なキャリア戦略であり、自分がどちらを志向するかを早めに意識しておくとよいでしょう。

5-2. 企業規模によって年収テーブルはどう変わるか

金融PMの年収は、企業規模によっても傾向が異なります。メガバンク・大手証券・大手保険会社などの大企業では、給与テーブルが確立している分、年収の上振れ幅は限定的である一方、賞与や福利厚生を含めた総支給額は安定しています。一方、地銀系のシステム会社やFintechスタートアップでは、個人の実績次第で年収テーブルの外での提示(成果連動型の年俸制など)が行われるケースもあり、上振れ・下振れの両方の振れ幅が大きくなる傾向があります。

どちらが良いかは、安定性を重視するか、実績に応じた伸びしろを重視するかという、個人の価値観によって変わります。転職先を選ぶ際は、年収レンジの数字だけでなく、その企業の給与制度がどちらの傾向を持つかも確認しておくと、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

6. コラム — 年収600万円台から900万円台へ。ある方の転身

僕が面談した40代の男性は、地方銀行の勘定系運用部門で年収600万円台で働いていました。転職相談の当初は「今の年収を維持できれば十分」という控えめな希望でしたが、職務経歴書を一緒に棚卸ししていく中で、実は複数のシステム更改プロジェクトで移行管理を担ってきた経験があることが分かりました。

この経験を「移行管理責任者」としての実績に翻訳して職務経歴書を書き直したところ、大手金融機関のシステム子会社から、年収900万円台での勘定系刷新PMポジションのオファーを受けることができました。彼が驚いていたのは、「自分では当たり前だと思っていた仕事に、これほどの評価がつくとは思わなかった」という点でした。

7. 年収を上げるために今日からできる3つのこと

7-1. 過去に担当した案件を「予算規模・関係者数・役割」の3点で棚卸しし、数字で語れる形に整理する。

7-2. 自分の経験が「運用保守」なのか「プロジェクト推進」なのかを客観的に見直し、後者の要素があれば積極的に言語化する。

7-3. 面接では「守った実績」だけでなく「動かした実績」を意識的に語る。何も起きなかったことの価値と、プロジェクトを前に進めた価値の両方を伝えることが重要です。

7-1. 資格・認定は年収に直結するか

PMP(Project Management Professional)などの資格取得を検討する方も多いですが、正直に言うと、資格そのものが年収を直接押し上げる効果は限定的です。資格は「プロジェクトマネジメントの共通言語を理解している」ことの証明にはなりますが、面接で評価されるのは、あくまで実際にプロジェクトをどう動かしてきたかという実務経験です。資格取得を目指す時間があるなら、その時間を過去の実績の棚卸しに充てる方が、転職活動においては費用対効果が高いというのが僕の考えです。

(結論)年収は経験の「翻訳の質」で変わる

まとめます。①金融PMの年収は職域によって600万円台から1000万円超まで幅があり、統括範囲の大きさが評価を左右する。②同じ勘定系経験でも、運用保守のままか刷新プロジェクトの推進役に回るかで市場評価は大きく変わる。③年収を上げる第一歩は、自分の経験を数字と役割で語り直すことにある。

率直に言うと、多くの方が自分の経験を過小評価したまま転職活動をしています。まずは15問の適性診断で、自分がどの金融PMタイプに近いかを確かめてみてください。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 金融PMの年収は他業界のPMと比べて高いですか

職域によりますが、勘定系刷新やPMO統括など統括範囲が大きい職域では、他業界のシステム開発PMと比べても遜色ない、あるいはやや高い水準の提示が見られます。ただし個人差・企業差が大きい点にはご留意ください。

Q. 運用保守から刷新プロジェクトへ社内異動するのと転職、どちらが年収は上がりやすいですか

一般的には転職の方が年収の上昇幅は大きくなる傾向があります。社内異動では現在の給与テーブルの制約を受けやすい一方、転職では新しい役割・実績に基づいて年収が再設定されるためです。

Q. 年収交渉で意識すべきことは何ですか

自分が担当してきたプロジェクトの規模と役割を、具体的な数字で語れるように準備しておくことです。「大きな案件に関わった」ではなく「予算◯億円・関係者◯名の案件で移行管理を担当した」という粒度で語ることが重要です。

Q. PMPなどの資格は取得しておくべきですか

資格そのものが年収を大きく押し上げる効果は限定的です。資格取得より、過去に担当したプロジェクトの規模・役割・成果を具体的に棚卸しし、職務経歴書と面接で語れる形に整理することの方が費用対効果が高いというのが実感です。

Q. 大企業とスタートアップ、どちらが年収は上がりやすいですか

一概には言えません。大企業は給与テーブルが安定している一方で上振れ幅は限定的、Fintechスタートアップ等は実績次第で年収テーブルの外での提示もあり、振れ幅が大きい傾向があります。安定志向か伸びしろ志向かで選び方が変わります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDF(16:9・全17ページ)に再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。

いま自分がどの金融PMタイプに近いか、診断で確かめる

15問の適性診断で、あなたの経験がどの金融PM職域に接続するかが分かります。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む